春永に。

三軒茶屋キャロットタワーには入っている
世田谷パブリックシアターとシアタートラムという二つの劇場。
今回は1階にある小さい方の劇場、シアタートラムに行ってきました。
客席は250席ほどの大きさでこじんまりとしていて、
席も全て段差がついていて、とても観易い劇場です。


『ハルナガニ』
※ネタバレ含まれています。ご了承ください。
『すいか』などの脚本で知られている木皿泉さん脚本のお芝居。
わたしは木皿さんの書く台詞が大好きで、
ごはんを食べて眠ってという普通に過ごす日常が大切だということに気づけたり、
後ろを向きたくなるときにそっと背中に手を置いてくれるような台詞に助けられたりしてきました。
脚本×演出×主演が同じだった『すうねるところ』が良かったという話を聞いて、
今回、見逃したくない…と行ってきました。
そして、わたしが大学時代、自分で初めて舞台を選んでチケットを買って観に行った作品*1
いっけいさんが出ていて、その作品が素晴らしかったからこそ
今、劇場に行くという楽しみができました。
ひさしぶりに見たいっけいさんが、その作品を思い起こさせるような内容で、
しかも小さめの劇場で観たということに、初心に戻らされた気がしました。


5人の登場人物で繰り広げられる90分ほどのぎゅっとした作品でした。
ほんと観る側に委ねられているというか…
それが、この作品の核になる部分でもあって、
なにが本当かということは、どういうことかというのを考えさせられる作品でした。
わたしは、どちらも存在するという風に見ていたのですが、
パンフを見ると、それがそれぞれによって違うようにもとれるようにできているようで、
あーそういうことか!というのが発見でした。
その分、すごい頭をフル回転させたというか…
何が答えなんだろうというのを探しながら見ていたので、
物凄い集中して見ていました。
でも、いっけいさんのある台詞で、そこから解放されたというか…
ふわ〜っと感情が解放された気がして、
涙がこぼれていました。
わたしが探してた答えなんて、いらなかったんだと。
舞台は想像して見ることができるのが楽しみのひとつであって、
それを充分に感じることができた作品でした。


日常だけどファンタジーでもある。
その中だからこそ、誰かに触れることのできる温かさ、
みんなで食卓を囲む素晴らしさ、
必ずやってきてしまう朝に助けられるという
当たり前のことを大切にしようと思えたし、
人との繋がりってこんがらがっちゃっても、愛おしいものだって思えました。


それでは、いずれ春永に。

*1:泪目銀座『LOVER SOUL』