得体の知れない変なオッサン。

有難く当ったので立教へ行って参りました。
今朝もテレビでやっていましたが
この様子は読売新聞の11/7の朝刊に掲載されるそうです。
来週月曜の『ノンストップ』でも放送されるようです。


そちらを見た方がスッキリまとまっていると思います。
他にも書かれている方いらっしゃると思いますので。
わたしは、書いていいものかというのもありますが…
ただ長いだけの中身あんま書けていない文章を載せて
お茶を濁させて頂きます……




思った以上に大きなしっかりとしたホール。
椅子には折り畳みの机がついており、
2階まである座席は満員になって1000人ほど入る大きさで
今日はそのほとんどが埋まっているとのことでした。
老若男女、様々な方がいらっしゃっており
最前列の関係者席には町田さんの姿も。
壇上には演台とその横には黄色い綺麗なお花が飾られているという
本当にばりばりの講演会。


大学総長のお話が終わると拍手の中、
紙袋を手にふら〜っと登場した又吉さん。
今日きて下さってるみなさんは本が好きなんですよね?
手を挙げなかった方が何名かいらっしゃいますが
このホールの内装が好きとかですか?
と始まった特別講義「なぜ読むのか」


カラオケの本で「た」のところで太宰治を探してしまったり、
夢の中でおっきな本の上を飛んでいて句読点が多いから武者小路実篤かな
と思うくらい本が好きという又吉さんが本を読むということを
自分の視点から話してくれました。


●本を読む。
又吉さんにとって本を読むと言う事は
「感覚の確認作業」と「感覚の発見作業」だという。


「感覚の確認作業」とは、自分の中だけで思っていて
言葉にしてなかったものが本の中に出てきてハッとすること。


子どもの頃、公園でサッカーをしていると
知らないオッサンが指示だしてきて怖かったことがある。
サッカー以外にもブランコに乗っている子にも指示を出し始める。
でも「怖い」ということを言葉にすることはダサい気がして誰も言わなかったが
ある日その中の一人の子が「あのオッサン怖い」と言葉にしたことで
みんなそう思ってたのだと知る。
そのオッサンはいつもミルクティーの細いカンに座っていて
「ミルクティーのおっさん」と命名された。
得体の知らないものに名前がつくのも感覚の確認作業と同じ。
だから本も「得体のしれない変なオッサン」という感覚。



そして「感覚の発見作業」とは、共感じゃなく裏切られる気持ちを感じること。
その気持ちを感じる作品が太宰の『親友交歓』
見知らぬものに私生活を侵略される作品。


自分は見知らぬ人に対して「知りません」と言う事ができない。
以前、下北の駅前で先輩を待っていた時
知らない50代のオッサンに話しかけられたことがあった。
「よう!」と肩を組まれ「やってんだろ?」と。
そんなときでも知らないと言えずニヤっと笑うことしかできなかった。
「何をですか?」と聞くと「ブルース」と言われる。
その後も腕にある小さなタトゥーを見せてくれ
「30分なら時間あるよ」と誘われ困っていたところに
先輩が助けに来てくれたことがあったこともその感覚に近い。




●本を好きな理由
又吉さんが本を好きな理由は「共感」と「驚き」があること。
そして、その中に狂気性があるものが好きだということでした。


小説では笑える小説が好き。
今でも「本好き=暗い」と思われていることは歯がゆいが
自分が本を好きと言っているとやっぱり暗いと思われてしまい
本のネガティブキャンペーンをやってる状態になってしまっている
ことが悔やまれるよう。


笑える小説で挙げるならば、太宰の『服装に就いて』
この本を読んで小説は真面目なことばかりじゃないんだとびっくりした。
何かに対して真剣にいった時の滑稽さが好き。


逆にシリアス・深刻な小説は自分の救いになるという。
家で一人でいると究極の変顔をしたり
お風呂のシャンプーで独自の髪型で遊んだりすることがある。
そういうことも自分だけじゃないんだなと感じることが出来、
読んでいると乗り越えていけるきっかけになると思うとのことでした。



●言葉そのもの
又吉さんは単純に「言葉」そのものが好き。
耳元で知らないオッサンに単語言われたらそれだけで笑える。
だから「辞書」を読むことも好きだという。
そこで、紙袋からおもむろに持参した「広辞苑 第2版」を出し
子どものころやっていた遊びを披露してくれました。


1 まずテーマを決める
今回は「電車で隣で寝ているおじいさんが言ったら嫌な言葉」
2 適当に開いたところから、そのお題にあたる言葉を探す
又吉さんがこの日開いたところから見つけ出した言葉は
「出来上がり」


小説はその「言葉」の連なりであって、それが無限にあるということ。
「言葉」自体に興味を持つとより面白く感じることが出来るという。



ここで学生さんからの質問に答えることに。
又吉さんが本を読んできたことによって
それがどう活かされているのかという問いには
今まで読んできたこと蓄積されて無意識に出る。
もし本を読んでいなかったら、
ダンスを中心にした芸になってた可能性が一番高いと言ってみる。
ツイッターで太宰と同じこと言ってると
他人から指摘されたりするくらい無意識に書いていたりもするそう。


続いて、純文学を読むのがあまり得意ではないという学生さんからの質問には
又吉さん自身は純文学が特に好きで
もし最後まで読んで分からないことは調べるかもう一回読み、
納得いくまで読むタイプだということでした。
みんなが面白いと思っていることを
自分もそう思えないのが嫌というのもあるそう。
そして、本には読むタイミングがあるとのことでした。


質問をした学生さんは名前を呼ぶと
きちんと手を挙げてくれる積極的な方だったので
自分だったらおらんふりしてしまうと感心する。


●こたえ
今回の「なぜ読むのか」という問いへの答えは、
「とにかく本は面白いから読むんだ」
ということでした。



トークバトル
町田さんと石川館長も登場。


●町田さんにとって本を読むということ
本を読むまでは、一定の隔離された自分があるような気がして、
その自分を疑うことはない。
でも本を読むと自分の尺度やものさしなんてものは
無いことが分かり、その尺度は疑わしくなる。
人はこの世に自分が産まれる前から存在していた物語・世界に弱いので
どんなに小さくてもいいから自分の物語を持つことが大事だということでした。



●同じものを何度も読む?
又吉さんは読む前と後、影響を与えてくれる本が好きで
二人とも気に行ったものを何回も読みたいそう。
読むたびに新しい発見があり、何度も読む方がより驚きと発見がある。


又吉さんは「地名辞典」が好きで単語の響きで荻窪に住みたかったが、
安いところを紹介してもらったら三鷹だった。
三鷹の安い家を探すと大体そこに当たる。
その場所が太宰と同じだったと住んでると分かった時は
喜びと同時に気持ち悪さを感じたそう。


●又吉さんの読み方のコツ
小説は一気に、最低でも2日間で読みたいので
時間に合わせて読む本を変える。
移動中や合間には短編やエッセイなど、午後空くときは長編を読む。
アメトーーク』でやっていた本に埋もれる姿を披露していました。
又吉さんが好きな町田さんの本には
共感・驚き・狂気・笑えるの自分が本に求めているものの全てがある。



●読者が笑うと思って書いているか
町田さんによると、書いてるのも喋ることと同じで途中で気分が変わる。
ここを読んで笑うだろうと思って書いていない。
書いているうちに出てくる言葉で自分で笑ってしまう。
笑いとはある種の崩壊で自分が破壊される快感がある。



●共通点のある二人
大阪出身の二人。
大阪の距離感は独特だという。
又吉さんは普通に書くと関西弁になるけど
そのまま書くのは面白くない。
文章の中に緊張感が欲しいが関西弁で書くとそれがなくなってしまう。


●人間は非合理だ
町田さんは、書くときなど
これをしたらこの後、なにかなるとは思っていない。
役に立つとか考えたら何もできない。
表現したら役にたつことなどなく、現在からも将来からも計ることはできない。
自らの意思でしたことも結局は巻き込まれている。
人間は合理的だと思うから純文学を読んで分からないと思ってしまう。
純文学に登場するのは、大抵非合理なことや人。
人間は非合理だと思って読むと違うはず。


はっきり実感を感じることができる時間は3〜4時間なのに
5年後10年後なんて考えるのはバカバカしい。
周りが不安にしているだけ。


●創ることが好き
又吉さんは面白いネタを書くために本を読んでいるんじゃない。
本を読むことはお金がかからず、独りで出来ることだったから、
仕事が無く時間があった時に読んだものが蓄積されて今がある。



又吉さんの魅力はテレビの中の違和感・どんなことを発するのかと
惹きつけられることではないかと分析する石川館長。
そう言われ、昔はもっとまったりしゃべっていて
今はこれでも早くなった方だという。
そのまったりした話し方をいじられていた。
笑われたらあかんと言うが、自分は笑われスタートだった。


色々創るのが好きで普通に働くのは難しそうだと思っている。
芸人という仕事では大体やりたいことは賄えて、
やりたくなったらそれをやっている。
創るのが好きだけど稽古が嫌いなので
自分がやるには間に合わないこともあって
誰かがやるためにつくったりしているそう。


●芸人として売れることが出来た理由
あれだけ数の多い吉本の中で勝ち残れた理由を聞かれた又吉さんは、
負け続けたから。そして、相方の才能もあるという。
売れる条件は、明るさと清潔感と分かりやすさだとNSCの先生に言われ
自分は全てが真逆だった。
ある意味自然体。



ここでお二人のお薦めの本を紹介してくれました。
町田さん
お薦めと言われても自分が読んで面白かった本は、
ただ凄いだけの場合もあると言いつつも読んで面白かった本
○『地図集』
○稲垣栄洋『都会の雑草、発見と楽しみ方』
雑草の本と言うとこじゃれているのが多い中で、ちゃんとした雑草の本。
深沢七郎笛吹川
『庶民列伝』『盆栽老人とその周辺』などもあるが『笛吹川』が一番面白い。


又吉さん
今日話したことに関係する本をということで
西加奈子『ふくわらい』
自分で言いきったことも不安になることがある。
世の中の価値観とかに疑問を持った上で何を信じていいのかという作品。
○町田 康『告白』
生きていく中で必要な笑い・自意識が詰まっている。
何十年先まで読まれる小説。


西さんの名前を聞き、なぜか西さんの話をぶち込む町田さん。
その話を聞き、又吉さん「そうですかぁ」と。


最後に学生に一言
○町田さん
他人に認められるようになったらいいんじゃないか。
○又吉さん
とにかく楽しんでもらいたい。
自分は楽しんでいるようにみえないとは思うけど楽しい。
おもろいこと見つけて楽しんでください。


と少し時間を過ぎたところで終演となりました。





この日の又吉さんは髪がふんわふわで
こんなこと言っちゃだめでしょうが…とても愛くるしかったです。
可愛かった…すみません。


又吉さんが一人で一時間弱も話せるのかとドキドキしましたが
話すことを予めメモしていたっぽいノートを捲りながら話していました。
「プリーズおじさん」の話も出てきました。
本や言葉に対する想いがとてもこもっていて
丁寧にゆったりと話している姿が印象的でした。
そして、本に埋もれる姿を生で見れたことに静かに興奮してしまいました…
売れたことには相方の才能もあると
又吉さんの口から出てくると何度聞いても嬉しいです。
又吉さんがやっていた辞書の遊びは『おのれ』でやっていたものでしょうか…


町田さんが渋くて…横顔にくぎ付けになりつつも、
お二人が淡々と話している中に出てくる言葉にハッとしたり
納得したりしているうちに、あっという間に時間が過ぎていきました。


町田さんが又吉さんの話していたことに対して
本を好きなワケとか全く同じですと話していることが多く、
辞書を使った遊びにも面白そうと興味を持ってくれていたので、
きっと嬉しいんだろうなぁと勝手に思いながら、ふむふむと聞いていました。


普段とは一味違った、何て言うんでしょう…
しっかり?ゆったりとした又吉さんの空気に包まれていて
聴き終わった後は高揚感でいっぱいでした。
こんな時間がただだなんて贅沢の極み。


そんな幸せな時間を一緒に過ごせたことに感謝をこめて。


又吉さん、町田さん、大学のみなさま
心地よい刺激のある時間をありがとうございました。


ここらで失礼いたします。
ありがとうございました。