才能はみんなある。

※ネタバレ含まれます。ご了承ください。
又吉さんは『オイコノミア』*1で余命がわずかになった時に、
会いたい人・知らせて欲しい人に二人の名前を書いていました。

綾部

綾部さんというのは今の相方であるピースの綾部さん。
そして、もう一人の原さんは、たぶん…
又吉さんの前のコンビである「線香花火」の相方であり同級生の原さん。
『acteur』*2に掲載されたコラム「前略」で

解散しても原くんとは会える。

そのインタビューでも

正直、原はしぶってたんです。一方で僕がネタを書けることはみんな知ってるので
他の芸人志望のヤツから誘われて。ただ、どうしても原とやりたかった(略)

と原さんの名前は登場します。


わたしも写真でしか見たことがありませんが、原さんは又吉さんより少し大きな方で
以前ガーデントークで話していた話によれば原さんの方が立場は上だといいます。
又吉さんの口からは「原くん」という名前は度々登場し、
もしかしたら原さんがいなかったら今の又吉さんはなかったのかなと思うくらい
大きな存在の人なんだと思いました。
綾部さんは冗談まじりに、トークライブで前のコンビや相方の話をする又吉さんに
その話オレの前でするなよと言っているのを聞いたことがあります。



綾部さんの以前のコンビはスキルトリック。
相方は小学校からの?同級生の小池さん。
「小池さんにとって綾部さんが全てだった(綾部談)」というほどの仲で、
今でも地元に帰る時には、集まる大切な仲間のようです。


二人とも出身・年齢は違うもの綾部さんは就職した後に、
又吉さんは高校卒業後の同時期にNSC東京に入学し*3
地元の友人と組んだ同級生コンビとしてスタートします。
二組とも「コントのスキルトリック・漫才の線香花火」と言われるほど
かなりの実力・人気があったと聞いたことがあります。
しかしその後、綾部さんのスキルトリックが解散し*4裏方の仕事経てピン芸人に。
知恩院のストラップをきっかけに仲良くなっていた二人は、
この先を悩む又吉さんの相談*5に綾部さんがのっているうちに
二人でコンビを組むことになり10年を迎えようとしています。*6


お互いが「解散」を経験しているピースの二人。
そして同じ夢を目指すも今は芸人を辞めて「相方」だった人は「友人」に戻った。




『芸人交換日記〜リーディングシアター〜』
ピース編





彼女に朝も昼も働かせて、
自分は情報収集だと言って合コンするツッコミの甲本が綾部さんで、
実はツタヤでバイトしているのも若い子の情報を得るためで
才能をスタッフに買われているボケの田中が又吉さん。
語弊があるのは覚悟で書くと、世間的に見れば
綾部さんは、リアルに熟女好きで大きな声で普通のことを言っている五月蝿い人。
又吉さんは、おしゃれでサッカーも出来て大喜利も得意な暗い文学青年。
二人ともきちんとキャラクターが立っていますが、たぶんお笑いのセンスという意味では
又吉さんが評価されているのが現状だと思います。
そして、芸歴でいうと11年、ネタ合わせしていたのは世田谷公園。
色んなところがピースとリンクしている舞台でした。
余計なことも書くとするなら、甲本が大事なところで噛むというのも、
綾部さんもKOCで噛んでいた気がします。


でも、あまり言葉を発してない又吉さんをきちんとフォローしてるのが綾部さんで
困った時に助けてくれるのも綾部さんで、心配してるのも綾部さん。
そして、その才能を一番分かっているのも綾部さん。
綾部さんにとって漫才とは「相方の好きなもの」
トークライブでは、時に一人で話し続けることも多々ありますが
綾部さんは世間の自分に対する見方もきちんと分かっているようです。
原宿をグラサンかけて歩いてたらどう思われるか、
おしゃれ本を出したら好きじゃない人がどう思うか、
分かっていてやってる人。自分を客観視できる人。
だから、厳しく後輩にいうこともあるし、仕切ることもしっかりできる。
周りが見える人なんじゃないかと思いました。


又吉さんは才能もあるはずなのに、
自分から何かをうみ出すことを今も止めていません。
好きな本読んで、寝ないでライブのネタ考えて、行き詰れば散歩に出て
その刺激で何かを生み出そうとして、さみしくなったら?後輩に連絡して。
気にしすぎなのに、服装だけはやたら主張する。意外とキレやすい。
分からないのは当然なのですが
わたしはいまだに又吉さんが掴めないほど、いろんな姿を持っています。
後輩のこともきちんと見ていて、しっかり後押ししてくれる人。
あまり表には出しませんが、きっと誰よりもお笑いが好きなはずです。



そして、二人ともピースのこともちゃんと考えている。
又吉さんは今後の活動を聞かれた時に
「「大前提として」ピースの活動は続いていると思います。」と話し、
以前、綾部さんは「文芸誌に芸人で載ったの初めて」と話す又吉さんに
そういうのは大事にしなきゃダメと言っていました。
又吉さんはライブで度々「綾部のおかげで売れた」と話しています。
全くかみ合わないようにも見える二人でも、認めるとこは認め、
きっかけとなった知恩院や京都、理不尽なことには厳しいという感覚など
見えない部分で繋がっている。それがコンビなんじゃないかと思います。



今回舞台で綾部さんは涙を流していましたが、又吉さんは淡々と田中でいました。
でも、又吉さんが天を仰いだり、
落ち着こうとしてか何度も肩を上げて(深呼吸?)いる姿も見え、
エンディングのトークでも必死にこらえていたと話していたので、
気持ちの高ぶりを押し殺しての淡々さだったのかなと思いました。
綾部さんは、かなり感情が入っていて気持ちのこもる声が伝わりました。
最後の天国漫才は、始まりから又吉さんの躓きに大いに盛り上がって、
さっきまですすり泣いていた客席も一気に笑いの中に。
でもわたしは気持ち悪いことに、笑うというより泣いてしまっていました。
二人が楽しそうに漫才している姿を見ていると、
なんだかこみ上げるものがあり泣き笑いしていました。
イエローハーツなんだかピースなんだか…重なって見えたのでしょうか。
漫才している姿に、ワっと沸く会場に、ほんと良かったと思えてしまいました。
物語の全ての思いが綺麗に昇華された瞬間のように見えました。
一度目のカーテンコールが終わり、三人がはけていった後も
また涙が込み上げてきて泣きそうになる気持ち悪さ。
今のピースを見れた安堵感というのか、良かったと思えたのか。
また三人が出てきたので、必死に堪えました。


エンディングでは、綾部さん膝から崩れ落ちそうなくらいなのを
必死にエロいことを考えて抑えてたということや
泣かなかった又吉さんは綾部さんにアンドロイドと言われるも
「言わなハドソン!」と違うことを考えて必死に堪えていたという
いつものやり取りが繰り広げられていました。
又吉さんの発言に伊勢さん大ハマリ。





やっぱり観終ってすぐ立つことができず、少し席でぼんやり。
今回、この作品の中で「オレ頑張ったよな」
という甲本の台詞が妙に突き刺さるものがありました。
わたしはDVDを見ても本を読んでも、この作品と「夢を追う人の背中を押す」
という言葉が結びつきませんでした。
背中を押すのだろうか。
むしろ「諦めるのも才能」と言われたら諦めちゃうんじゃないかと。
でも、3回目。今回劇場で見てみて、やっと分かった気がしました。
もし自分が夢を持てたのなら、簡単に諦めちゃいけないということ。
同じように今一緒にもがいている人がどこかに絶対いるということ。
もがいた先に光が見えた人を目の当たりにした今日。
その思いが誰かの背中を押してあげることにつながる。
なんでわたしはそこに気付けなかったんだろう。


途中、ふと…田中の相方となる福田の存在を思いました。
福田はどういう思いなのだろうかと。
福田も相方が失踪し、田中とコンビを組むこととなります。
何もかも分かった上で、福田とコンビを組んだ田中。
本当は甲本と漫才がしたい田中。
福田はどういう気持ちなんだろうなと思うと胸がキュッとしました。



最後に、伊勢さん。可愛くて素晴らしかったです。



ピースのお二人、伊勢さん。
素晴らしい時間をありがとうございました。



多くの個人的な意見、失礼しました…

*1:2012年12月25日放送「年の終わりに人生設計!後編」

*2:2012年7月号

*3:1999年入学。NSC東京5期生

*4:2000年9月

*5:線香花火 2003年8月解散

*6:2003年10月1日結成