その夢につけた名前。

※ネタバレ含まれる、感想です。
綾部さんは以前ライブで又吉さんからピースを知ってくれた人で、
自分(綾部さん)を好きになる人はいるのか
と夜、寝ていて急に不安になったという話をしていました。*1
笑ってしまったお客さんの反応に「いない」と感じてしまった綾部さん。
でも…


「いる。」
今なら、そう断言できます。
わたしは又吉さんに偏ってピースというコンビを見ていたので、
綾部さんという人をしっかり見ていなかったのだと
ここ最近、急激に感じています。
それをまた感じた番組がありました。


フジテレビの深夜で、しかも関東ローカルという狭い場所で
ひっそりと放送された
『無名時代』


2010年9月23日木曜日
その24時間が終わりに近づいて行った中の3分30秒。
ピースにとって、重要な3分30秒で、忘れることのない一日。
その日を境として、その名が知れ渡るまでの道のりを追った番組。


知りうることのできなかったであろうピースが世間に認知されるまでの
およそ11年という月日を丁寧に追っていました。
普段は見ない二人の背中をたくさん見た気がします。
大事な土地を巡りながら、
二人の口から、その時々を傍で見ていた方からの目線を通して紐解いていきます。






とても素晴らしい番組でした。
ピースの二人を綾部祐二又吉直樹という芸人である前に一人の人として
向き合っているのが伝わってきます。
二人の背中をこんなにも見たのは初めて。
歩く二人を真横から撮っている画がとても印象的で
歩み続ける今を表しているようでした。
まさか「ハンサム男爵」を見て、こんなにも泣く日がくるとは思っておらず
観終って生まれた感情を言葉にすることができませんでした。
そこまでの道程を見てしまってからのあの状況を見てしまうと、
感情がぐちゃぐちゃになっていたのです。



こんな風に自分たちのことを振り返る時が来ると、
初舞台のチケットを大事に保管していたという綾部さん。
綾部さんの口からスキルトリックや裏方時代の話を聞いたのは、
初めてのような気がしました。
自分の見られ方・見え方というのをいつも意識していて、
言葉遣いも丁寧だし、振る舞いも綺麗で、
傍から見れば異様なくらい、いつも明るい。
その綾部さんが不安や葛藤を口にしている姿は初めて見たけれど、
すごくスッキリした表情で話していたのが印象的でした。
綾部さんは、人に自分のことを相談しないと話していましたが、
そうやって自分と向き合って、誰かに甘えず闘ってきた人は、
きっと誰よりも強い。
「今はマイナスかもしれないけど、プラスにいけないことはない。」
その言葉は、確かなものだと思えました。


先日、綾部さんはインフルエンザから復帰後、
初の仕事がトークライブで、それを吹き飛ばすごとく華々しく登場しました。
3日という短い休みということもあってか、
本当に大丈夫なんだろうか…という想いを少なからず持って向かいました。
でも、綾部さんは、スポットライトを浴びて、スターのように登場しました。
本来持っているスター気質もあるとは思いますが、
お客さんを安心させようという想いもあったのかなと。
あそこまでやれば、心配は吹き飛ばすことができると。
自分の心配だけではなく、そこまで目が行き届く人なんだと今は思えます。



そして、又吉さん。
又吉さんを語る上で、避けては通れない人。
「あれが僕の東京のハイライト」*2と言うくらいの思い出がある大切な人。
そこにもきちんと触れていたことにもこの番組の持つ意味を感じました。
そこは又吉さんの中でもきっと大きな分岐点なのだろうと。
時を同じくして綾部さんだけに仕事が増えてきて、
焦りや不安もある中で自分と向き合うことから逃げなかったから、
今の活躍があるのかなと思いました。
「自分おもんない」と認めることができる、
その感覚こそが又吉さんなのだと。


番組を見ていると分かりますが、ピースの二人は全く違って見える。
又吉さんに言わせれば、火に油。
NSCへの願書を見ても、そう。
陰と陽とでも言えるほどに対照的に存在する二人。
それを違和感と捉えるか、魅力と捉えるか。
この番組を見ていると、違う二人だからこそピースの今があるのだと思えます
お互いに強みを持っていて、それがぶつからないからこそ、他のコンビにはない魅力を持っているのだと。
仕事に差が出てきても「毎週新ネタをおろす」ことができたのは
「ピース」というものを二人が大切にしている証拠。
上下することもなく、きちんとお互いの良さを尊重しあっている素晴らしさがあるから。
二人がお互いを比べることなく、自分自身を客観的に見れるからこそ、
今のピースは存在するのだなぁと。
同じように自分という孤独の中でひたすら向き合ってきた二人が
ピースとして、掛け合わさることで、
それ以上の力が生まれているのではないかと思いました。


この番組の中で一番、印象的だったのは
無名だったころの自分に掛けたい言葉はと聞かれて
綾部さんが「合ってたぞと。間違いはなかったっていう。」
そう言って笑う姿でした。
その姿を見ているとこみ上げるものがありました。
あの優しげな笑顔が、たまらなく突きささってきました。
「間違いはなかった」
そう言える今があって良かったと思えると同時に
「これからどうやっていこうかなと楽しみです」
と言っているその目に映るものを見ていきたいと思いました。


「僕としては、劇場にじじいになっても出れたらええなとは思いますけどね。」
又吉さんから劇場へのこだわりを感じることは多々あるのですが、
しんどかったであろう劇場という場所に
どうしてそんなにもこだわってくれるのか
わたしはそれをものすごく聞いてみたいです。


昔は普通だったはずなのに、原宿を歩く二人を見ていると感じる違和感。
周りの反応、少し気恥ずかしそうな二人、なかなか目を合わせない又吉さん。
今、二人で原点ともいえる場所を歩くという意味を感じざるにはいられませんでした。
ピースの二人の人生があそこで交わってくれて
今ピースとして存在することを心から良かった思います。
二人にとって大切な場所である原宿で、
トークライブをしている姿を見れることを嬉しく思えました。
こんな二人だったら、まだまだこれからを歩いていってくれると確信を持てたし、
できれば見ていきたいと思いました。
もうピースをずっと好きでいられる。
感謝。

青春狂走曲/サニーデイ・サービス
青すぎる空/eastern youth
春よ来い/はっぴいえんど
トンネルをぬければ/カサリンチュ
ある車掌/星野源
木の葉散る/ランタン・パレード
Drifter/キリンジ
化物/星野源
※世田谷公園のバックで流れてた曲だけ分かりませんでした…

*1:2011年1月の『超ピース』より

*2:『東京百景』池尻大橋の小さな部屋より