本当のことなんてない。

昨夜のたにしでの高橋さんのお話が素敵すぎて、もう胸がいっぱいでした。
少しだけ、印象に残ったところを書いておきたいと思います。


●本当のこと。
本当のこと=100%伝えるということ。
そんなことは誰もできない。
それを分かっていたのは二葉亭四迷で『平凡』にはまさにそれが表れている。


「自分が見た」という時点でその人のフィルターがかかってしまっている。
それを誰かに伝えた時、その人が独自の視点で何かしら足している。
大きい事件ほど、みんな言っていることが違うのはそれぞれ見ているところが違うから。
同じものを見ても違う。
でも、それでいい。


だから本当の自分が分からないのは当たり前。
本当の自分を人に言う必要はない。
人は自分という牢獄の中で生きていて、そこから出ることができない。
そして、相手の全部を知ることは意味がない。
限られたところで理解し、信じあうことが大事。
人間には限界があると知って「伝わらない」「知りたくない」ということを大事にする。



又吉さんには、階段をリズミカルに登ったり、お風呂で変な顔したりしてる
想像がつかないような誰も知らない部分があるらしいです。


●脳の筋トレ。
小説を書いているけれど、うまくいかないというお客さんからの質問。
脳の筋トレだと思って一日原稿用紙3枚書くことを毎日3年間続けて
その中で3つ完結したお話をつくることができれば、違うと。
完結するものをつくることが大事。
そうすれば、自分がどういうものを書きたくて、どういうものが好きなのかが分かる。
書きたい時に書くのではなく、書けない時だから書くことが大事。
続けることって大事なんだなと思わされました。


●生と死。
死について最後に質問をされた方がいて、その質問をできることも凄いし、
それに答えた高橋さんのお話が素晴らしかったです。


今の日本は「死」を遠ざけようとする。
海外ではテレビで流れる死体も日本では写さないようにしている。
だから「生」も遠のいてしまう。


命は、誰かが階段を下っていくから、誰かが登っている。
高橋さんには、まだ小さいお子さんがお二人いてその子たちの成長を見ていると、
自分の人生が終わりに近づいていってもそんなに恐れないようになった。
その子たちを見ていると、そのことの嬉しさが上回る。
みんなそれの繰り返し。


子どもは、ただ「生きている」だけ。
まだ言葉をあまり知らない子どもは、自分に引っかかった言葉だけを拾って話している。
想像がつかないような言葉を選んできて、
その姿を見ていると教えられることの方が多い。
そして、子供は4歳くらいでもういろんなことが分かっていて、大人より大人。


もっと…深みのある言葉で話されていたのですが語彙力が足りず申し訳ないです。


高橋さんのこの話を聞いていた木村さんが
おばあちゃんから聞いた話を思い出してその話をしてくれたのですが、
その話をしている木村さんの恍惚とした表情が忘れられません。
淡々と話しているのに、その瞳はキラキラと光っていて
聞いていると、心底愛するということはそういうことなんじゃないかと
目の前に生々しく迫ってきて、会場も飲み込まれていたような気がします。
木村さんが子供ながらにとんでもないものを聞いてしまったけど
どこかで分かるような気がしたということも納得していました。



と今日聞いたいろいろなことを思いながら、聴こえてきたエンディングの曲。
声に聞き覚えがあるのに聞いたことのない曲で、
その上無性に惹かれたので、歌詞を覚えて調べました…

今回のお話に寄り添うような曲でしたので、よろしければ。





ここからはわたしの感想です…
自分で見たという時点でフィルターが掛かっているという話。
先日YUKIちゃんのドームのライブ映像をテレビで見ていると、
そこに映っているYUKIちゃんは当たり前ですが
わたしが見ていた光景よりもはっきりと表情まで見えました。
でも…わたしがあの場所にいて一番印象に残った光景というと
『ワンダーライン』で花道の真ん中で楽しそうに歌っているYUKIちゃんと
その姿を包むようにドームのてっぺんまで広がった
楽しそうに跳ねるお客さんの姿なんです。その姿が目に焼き付いて離れない。
そこがわたしにとってこのライブを象徴している光景で、
楽しさと嬉しさとありがとうが見えた気がしました。


放送でも似たような光景はあったけども、
自分が目で見たものにはどうしても敵わなかったんです。
だから、自分の目で見るって大事なんだなぁと。


あと、今回30になるって大きいよねという話をされていて。
もうすぐ、そこへやっと辿りつく身としては何だか楽しみな部分が大きかったのですが、
昨日の話を聞いていて、少し不安にもなりました。
でも、まだまだいけるような気もしてきました。



とてもお話の上手い方でもう惚れ惚れして、いろんなお話を反芻していました。
今日も高橋さんが600枚?の原稿を今みたいに自動で送るコピー機がなかった頃に
一枚一枚コピーして、途中人が来ても構わず4時間くらいかけてコピーしたという話を
思い出しながらコピーしてニヤつきそうになる気持ち悪い自分ではありますが
何かを生み出している方のお話を聞くのは、
凄く楽しくて、刺激的で、スポンジになった気分で吸い込んできました。
吸収できたかは、分かりませんが…


又吉さんが質問された方の話をちゃんと聞いていて、
きちんとフォローしてくれるあたり、流石だなと思いながら。
気にしすぎの人ならではの、優しさのような気もしました。
まだ声が枯れてるようでした…


分かりやすいものに例えてくれるのは、本当に有難い。
日本文学盛衰史』は話を聞いているだけでかなり面白そうで
石川啄木がテレクラ好きで、田山花袋がAV監督…
身近に感じると全然違う気がします。
本屋さんに行ったら、穂村さんの短歌も載っているようで興奮していました。




木村さん、高橋さん、又吉さん。
濃密なお話をありがとうございます。
来年もあるようで、続けてもらえると嬉しいな。