希望の星。

ラジオを聴いたり聴かなかったり。お恥ずかしい限りです。
先週はしゃぶしゃぶ温野菜を探していて、手相占いに行ってしまいました。




「絶望するな。ぼくたちには西加奈子がいる。」
今回は西さんの『炎上する君』の文庫版の帯の一文から始まりました。



○又吉書物語り「本の帯を考える」
最近、帯を書く機会が増えた。本の帯は重要。
帯で興味を持って買ったこともあり、責任を感じて真剣に考える。


帯に「大どんでん返し」「衝撃の結末」と書いているのは
やめてもらえないかなと思っている。
「衝撃の結末」と言うなら、何の事件も起きず、一人も死なず、犯人出てこず、
日常の描写だけで終わった方が衝撃のの結末になるんじゃないかと思う。
「ミステリー小説」ということも言わなくていいかなとたまに思う時がある。
純文学の恋愛小説だと思って読み始めて、人が亡くなって、事件性があって、
探偵出てきて、トリックあったとなると結構驚けるしと衝撃もあるので、
その方がいいかなと思う。


帯は嘘でもよくて、その本を開いてもらえたらいいんじゃないかなと思う。
面白いから推薦するわけで、その本の素晴らしさが保障できるのなら
手に取ってもらえたら、帯を書く人間にとってそれ以上にできることはない。
帯を書くのはそんなに得意ではないが、好きな本には愛情持って書きたいと思ってる。



○本の達人
今回のゲストは、前回に引き続き夏葉社(なつはしゃ)の島田さん。
島田さんは本ができるまでの工程を一人で行っている。
夏葉社ができてから3年4ケ月が経ったそう。
今、本好きの人がかなり注目してる出版社。
島田さんは、もともと作家志望で小説を書いてアルバイトしながら転々としていた。


●こんな本を読んできました。
20歳まで全く本を読まなくて、大学時代にどっぷりはまった。
名作をとにかく読むタイプ。それは又吉さんも同じ。
国内外問わず、しっかり読んできたことが
今の夏葉社の渋いラインナップに繋がっている。


作り手の顔が見えると本もよく見えるという思いから
全国各地の本屋さんを1件1件廻っている。
本はモノだから、こういう風につくってきたと置いてもらうとイメージが膨らむので
それを大事にしている。
いかにも本が好きという本屋さんを田舎で見つけると日本素晴らしいなと感動する。



●又吉さんから見た夏葉社の本。
どれも佇まいが読まずにはいれない。手に持ちたくて仕方ない装丁。
装丁だけじゃなく、雰囲気がある本。
又吉さん自身も本を出す時どういう本が好きですかと聞かれて、
夏葉社さんの本を知ってからああゆう感じと相談すると無理だと言われる。
夏葉社さんの本は直接やりとりしているからこそできる本。


夏葉社さんの本はカバーかけないことが多い。
カバーは、返品されることを前提にしてつけている。
カバーがないと傷ついてしまい、もう出荷できない等リスクが多いため
カバーをつけないことは難しい。
しかし、本の美しさのためにリスクを背負ってでもやる。
「本は美しいもの」じゃないといけないし、
その美しさが何か分からないけど、これでよかったのかなと思う。


●きっかけ。
出版社をやろうと思ったきっかけは、
本があまりにも早いサイクルでなくなっていくことへの苛立ち。
65歳や85歳で死んでも売ってる本にしたい。
10年後のデザインはわからないので、引き算的にやってく形になる。
本を短いスパンで見ると魅力のないものに感じるけれど、
長くみると素晴らしい媒体だと思っている。


●『冬の本』の装丁の和田さんなど、つながりは?
本がきっかけ。単純にファンなので、ファンから好きな人にお願いするのは楽しい。
「いかに好きか」はいくらでも書ける。


●本の魅力。
本はインターネットで買えるけど、本屋で買う楽しみがあり
そこがなくなったら本の魅力が急激に減る。
本屋さんで見つけるのも、持ってかえるのも本の魅力。
本屋さんだとふらっと入って出会いがある。
本屋なくなったら本当にダメだと思います。
全国をまわって本の良さや本屋さんの良さを伝えていきたい。


最後に島田さんから
「又吉さんをほんとに頼りにしている。希望の星なので。」




リスナーの方からの質問で「美しい本」又吉さんからのおすすめ。
夏葉社さんの上林曉傑作小説集『星を撒いた街』
どれもほんとに一生のなかで、
この瞬間を覚えておきたい・この風景わすれたくない
という瞬間が切り取られている素晴らしい本ということでした。





昨年わたしがアルバイトをしていた駅前の小さな本屋さんが店をたたみました。
わたしの住む駅には、駅前だけで以前4軒の本屋さんがありましたが、
1軒また1軒と減り今は2軒になりました。
紀伊国屋みたいな大きな本屋さんも楽しいけど、
小さなこじんまりした地元の本屋さんという感じが好きでした。
自分が並べた本や好きな本が売れると、ものすごく嬉しい。話しかけたくなります。


いくら電子化と言われても、本は何故だか頁を捲りたい衝動に駆られます。
ドキドキ鼓動を打ちながら、文字がスピードを上げて頁の上を走っていく面白さ。
もしくは、じっくりゆっくりと息を呑んで一文字一文字を吸い込む瞬間の緊張。


思えばわたしもDVDとかネットで買うくせに、本は本屋さんで買っています。
あの探していた本を見つけた時の嬉しさは何なんでしょう。
本屋さんという静寂の中で一人一人が興奮しているんじゃないかと思うと溜りません。
また素敵な本と出会えますように。