ほとばしる自意識。

異様な雰囲気の無限大ホール。
いつものキラキラしたセットは黒い幕で覆われ
モニターには、えんじ色バックに『太宰ナイト2012』の文字。
舞台上のバミリのガムテープすらその雰囲気を醸し出しているよう。


そんな舞台に、又吉さん一人で登場。
太宰生誕100年の年に始めてから、今回が4回目。
今まで色んな場所でやってきましたが今回は無限大。
いつもは太宰のことを語ったりしているイベントで
今回は自分がやればどこかに太宰が入っているのではないかと
笑いの中に太宰という形になった。
太宰ということで、セットも大人4人がかりで黒い幕で覆ったそう。


走れメロス』でもいいので太宰を読んだことある方と聞くと、
ほぼ全員の方の手が挙がっていました。


皆さん出演者は知らないんですよね?
知らないのにこんな話をするのもあれですが…と
出演予定だったしずるのお二人が台風で新幹線が止まってしまったため
出演できなくなってしまったそう。



まずは、太宰の大まかな紹介をということで
又吉さんを挟むように2冊のスケッチブックが運ばれてくる。


右側を捲ると…
太宰治
1909年6月19日  
11人兄弟の10人目
裕福な大地主


左側を捲ると…
又吉直樹
1980年6月2日寝屋川市に生まれる
ぼっとん便所


というような雰囲気のことが書かれており
どうやら太宰と又吉さんの経歴が書かれているよう。
年齢ごとのエピソード。
○18歳
太宰/芥川の自殺に衝撃を受ける
又吉/徳井さんに出逢うが衝撃は受けず
○26歳
太宰/芥川賞落選
又吉/テレビに出ることをあきらめる
○30歳
太宰/下連雀に住み始める
又吉/下北に住むも、すぐ引っ越す
○32歳 
太宰/『東京八景』を書く
又吉/『東京百景』をマンスリーよしもとに連載中
八景の続きをと思っていたが最近はよく分からなくなっている。
○33歳〜36歳?
太宰/ヤバい小説をたくさん書く
又吉/ヤバい番組にたくさん出てる
○38歳
太宰/『人間失格』出版
又吉/急にモテ始める

みたい…なことが書かれていたような気がします…
と何となく太宰を知ったところでライブスタート。


●OP VTR
太宰と又吉さんのモノクロ映像バックに出演者の紹介。
『絶景雑技団』の時もそうでしたが、相変わらずすこぶるカッコイイVTR。


●DJ大喜利
耳にヘッドフォン、太宰のようなマントを羽織った又吉さん登場。
以前『実験の夜』でやった「DJ大喜利」のお題が太宰縛り。


「DJ大喜利」は、事前に又吉さんが考えてきた答えの中から
お題に合わせた答えを出すもの。
答えを探している間は音楽がかかり、
答えをレコードのように回転盤に乗せて出すと止まり、またお題が出る。
セットはDJブースのようで、真ん中に回転盤があり、
その両隣にはレコードの代わりに答えの書かれたフリップがたくさん並んでいる。


今回は答えが見えないように立てかけてあったり
「もう一回」という札があったりと前回からまた前進していました。
お題を読むミルククラウン竹内さんの安定感たるや。


お題
「太宰が歌手デビュー タイトル」
「寝言で言った一言」
「反抗期の太宰が母親に向かって一言」
「絶叫マシーンで叫んだ一言」
太宰治記念館にみることができるもの」
「左腕に人間失格、右腕のタトゥーは」
などなどでした。
最後のお題が出たものの、又吉さんはどのタイミングで
「エンド」を出せばいいのか分からず袖の方を向いて確認。


●太宰ラジオ619 1回目
ゲストの木村さんを迎えて、又吉さんと二人でのラジオ風のトーク
かかっていた曲を紹介したりしていました。


先ほどの「DJ大喜利」で又吉さんが羽織っていたマントは
実は木村さんの手づくりのもの。
まだ試作品でこれからマントのボタンが
太宰の家紋である鶴のマークになったりするらしい。
木村さんは太宰の甥っこさんを突き止めて、電話をしたりするくらい
太宰に関することにはとことんいく程、大好き。
又吉さんからみても芸能界一、太宰に詳しい。


ここでは、木村さんがお薦めの作品を紹介してくれます。
何を紹介しようか迷っていた時に
又吉さんが載っていた『acture』で
又吉さんが書いていた『前略』というコラムを読んだ。
そこの一節を読んで、この作品を紹介しようと思ったそう。
その「絶景」のくだりを木村さんが読み上げる。


それを聞いた又吉さんはこの文章の中で
一真面目なことを書いているところを読み上げられ、恥ずかしくなる。
ここを書きたいがための全てが前振りだったとか。


太宰が書くことで核としていたことが分かる作品が一冊目。
『もの思う葦』というエッセイに書かれている『一つの約束』。
この作品に書かれているような
誰も知るはずのなかった美談を書くということを核にしていた。
それは絶景にもつながる。


●コント『WORLD』
又吉、ミルククラウン竹内・ジェントル、グランジ五明、
ジュージーズ児玉、パンサー向井、井下好井 好井(敬称略)
まくら投げをして騒ぐ中学生、
雑誌で可愛い子を指さしあってきゃっきゃする社会人、
ゴールをきめて喜ぶサッカー選手…
けど世界は、そんな世界だけではない。世界は不平等だ。


以前、又吉さんがつくったコント。
このリハだか稽古の時、又吉さんがナレーションを読みだしたら、
みんなにとめられてしまった。
世界観が凄過ぎるでしょと。
どんな話しでも太宰に繋げるのが巧いと言われている木村さんでさえも、
答えを出すのに時間を貰いたい又吉さんの世界観満載のコント。


●太宰ラジオ619 2回目
曲紹介をするラジオ風に照れがある又吉さん。
続いては、太宰のイメージについて。
太宰のイメージは暗いと思われがちだが実際はそんなことはない。
又吉さんが太宰好きということが、
よりそれに拍車をかけているではないかということで
木村さんピックアップの太宰の本来のイメージ。

一枚目
・犬嫌い
・絵が病的
・歯医者嫌い
あと2つくらいありました…

二枚目
・芥川読んで小説好きになった
・胸毛が濃くていじられると怒る
・オシャレで、特に着物が好き
・京都好き
・人見知りでカッコつけ、心をゆるした人の前では甘えん坊


ここで又吉さんと太宰は違うということを言いたかったのに
ほぼ又吉さんに当てはまってしまう…
・このあいだ強制的に歯医者さんに連れていかれ歯を少し治したそう。
・木村さんによると、太宰が初めて読んだ芥川の小説は
 時代的に考えると『トロッコ』である確率が高い。
 又吉さんが初めて読んだ芥川も『トロッコ』。
・木村さんも好きな人の絵をこんなこと言いたくないといいつつ
 持ってきてくれた太宰の絵をモニターに。
 太宰の油絵は見たことがあるものの、
 鉛筆の走り書きのような絵を初めて又吉さんは見た。
 その絵が、自分が普段書いている絵に物凄く似ていることに驚く。
 太宰が書く人物は、ほとんど左顔。
 又吉さんも人を書くと左顔で鼻をかいて目はぎょろっとしているらしい。
・このあいだ『ピカルの定理』を見ていた木村さんは
 そこで出てきた又吉さんの絵を見て、太宰に似ていると思った。
・二枚目を見た又吉さんは、これ5つ合わせてピースですねと。
・心を許した後輩たちには「阿保や」と言われる。
・太宰好きが高じて、新潮文庫の夏の100選の太宰の2冊を又吉さんが選んだ。
 それを聞いた木村さん、すごく羨ましがる。


この中にある犬嫌いのエピソードの作品。
犬が嫌いなため吠えられないようにしようと犬に媚びていたら、
最終的に溺愛してしまったことが描かれている『畜犬談』を紹介。


●コント『太宰クイズ』
又吉、竹内、ジェントル、五明、児玉、向井、好井
又吉さん司会で向井・好井の「若者チーム」、五明・竹内の「徳井の犬チーム」、
ジェントル・児玉の「社会不適合者チーム」に分かれて行われていた太宰クイズ。


あまりにも自然なクイズの入りにコント??と思っていたら
気付くとしっかりコントの世界へ。


●太宰ラジオ619 3回目
太宰といえば…自意識。
この前の『太宰クイズ』が丁度、自意識を描いたものだったので
ここにこの話題を持ってきた自分を褒めてみた木村さん。
自意識を描いた作品である『ダス・ゲマイネ』を紹介。
卑俗の勝利を描いたものでもある。


4人の登場人物の中に「小説家 太宰」も登場しているその書き方も面白い。
この作品の中の女の子の間を通っていくところを読んでいて、
又吉さんは分かるわかると思ったことがあるそうで。
劇場に出ていると出待ちをして下さる方がいる。
でも、誰を待っているのかが分からないため
サインを求められた時の表情に困ってしまうことと同じだと思った。


この話しを聞いた木村さんは、作品に出てくる4人の登場人物を
どれが又吉さんかなぁと思いながら読むと面白いんじゃないかと。



★ブリッジ 
 又吉選「太宰名言集」一部。


ー感覚だけの人間は、悪鬼に似てゐる。
 どうしても倫理の訓練は必要である。
『純真』


ー本を読まないということは、
 そのひとが孤独でないという証拠である。
『如是我聞』


ー生きるといふ事は、たいへんな事だ。
 あちこちから鎖がからまってゐて、少しでも動くと、血が噴き出す。
『桜桃』


ー生きていくから、叱らないでください。
『虚言の信』


ーてれくさくて言えないというのは、
 つまりは自分を大事にしているからだ。
『新ハムレット


ー愛は最高の奉仕だ。
 みじんも、自分の満足を思ってはいけない。
火の鳥


ーアカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ。
 人モ家モ、暗イウチはハマダ滅亡セヌ。
『右大臣実朝』


人非人でもいいじゃないの。
 私たちは、生きていさえすればいいのよ。
ヴィヨンの妻



エンディングになるもまたもしめられない又吉さん。
何度も終わるかと思いきや「そして…」と話しだしてしまう。
木村さんが9月に太宰の甥っこさんとお話したことをまとめた本を出版されたり
今日出てるメンバーはこの無限大に出ているので観に来てくださいと
自分よりもみんなの告知をいつもながらきちんとしていました。
自意識の太宰だからこそ、しずるには来て欲しかったそう。


それ最初にやるんですよと言われながら
最後は
舞台「だざい〜」
客席「ナイトー!」
で終了。


みなさんがはけた舞台のモニターには
 命あらばまた他日。
 元気で行こう。
 絶望するな。
 では、失敬。
 『津軽



今回は笑いの中に太宰とのことでしたがしっかり笑いの中に太宰がいました。
コントも「っぽい」なと。
太宰が好きだから今の又吉さんがいるのか
又吉さんだから太宰が好きなのかは分かりませんが
太宰の中に又吉さんを見た気がしました。


今日たまたま読んだananでMC力を鍛えて
スパーMC又吉を…と話していましたが
又吉さんの隣にはスーパーMCが出来る人がいるので
今のらしさが残っているMCのままでいて欲しいなぁ
なんて昨日のMCを思い出していました。


わたしもかなり自意識が強い方なので…
話しを聞いていて、ホッとしたというか。
ん〜何でしょう…この人たちがいるから、自分もやっていけるというか。
そして、こんなにも愛されている太宰と又吉さんを
知ることが出来た嬉しさとでもいいますか。


木村さんは本当に愛くるしい人で、物凄く楽しそうに太宰を語るんです。
だから、その姿を見れば太宰のイメージは変わります。
そして、木村さんや又吉さんが太宰のことを話すと
自分たちに置き換えて話してくれるので
とても分かりやすく、読んでみようと思えてくるのです。


相変わらず要所要所の音楽がかっこよかったのですが、
音楽にあまりにも疎すぎて、
タイトルを言っていた『甲州街道はもう夏なのさ』さえも分からなかったので…
声的に凛として時雨はあったはずです…はて。


又吉さん、木村さん、みなさま…
本日も素敵な時間を有難うございました。
絶望せず、どこかにある絶景を探して、元気にいきます。
しずるのお二人も拝見したかったです。
来年もありますかねぇ
また長い時間、どっぷり浸かれる日が来るとよいです。


そして最近、あ〜楽しかったという記憶ばかりが強く残り
内容がうっすらしてしまい、どうしたのものかと思いますが
本日もこんな記録で失礼いたします。
ありがとうございました。